細胞再生!!若返り!!年はとってもいつもまでも若い!!成長因子IGF-Ⅰにかける思いと期待
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はじめに
ヒト、勿論、生物全体にいえることですが、その個体全体の成長、個体を形成している部分々々(組織)の成長、細胞や組織の修復・再生、機能の発現には成長因子の存在が不可欠です。そして、以前から表のような成長因子が知られています。これらは、いずれも多数のアミノ酸の化合物であり、その源は私たちが日々食事で食べている肉、魚、乳、卵、大豆などに含まれているはたんぱく質なのです。だから、このたんぱく質を上手にとることは成長因子を上手に身体の中に作らせることになるのです。私は15年ぐらいまえから成長因子、特に成長ホルモンの研究をしています。その間、成長因子IGF-Ⅰをうまく利活用すると、細胞再生!!若返り!!年はとってもいつもまでも若い!!という人類共通の願いを叶えることができると考えてきました。
そこで、今回は成長因子 IGF-Ⅰの働きやどのような臨床応用が可能かなどについてお話したいと思います。若いときにはまさに成長に欠かせないし、老いてからも細胞や組織の修復,再生に欠かせない成長ホルモンとIGF-Ⅰの働き、そしてその生成に欠かせないアミノ酸についても言及したいと思います。
表 主要な成長因子
分子量 |
産生部位 |
標的細胞 |
|
IGF-Ⅰ |
7649 |
肝臓ほか |
軟骨細胞,線維芽細胞ほか |
IGF-II |
7471 |
肝臓ほか |
軟骨細胞,線維芽細胞ほか |
EGF |
6045 |
顎下腺ほか |
上皮系,中胚葉系細胞 |
acidicFGF |
12000 |
脳,下垂体 |
線維芽細胞 |
basicFGF |
13000 |
脳,下垂体 |
中胚葉系細胞 |
NGF |
27000 |
顎下腺ほか |
神経節細胞 |
ECGF |
14000 |
視床下部ほか |
血管内皮細胞 |
PDGF |
24000 |
血小板 |
中胚葉由来細胞 |
TGRβ |
6000 |
胎児組織 |
上皮系,中胚葉系細胞 |
CSF |
24000 |
正常組織,腫蕩組織 |
上皮系,中胚葉系細胞 |
EPO |
数万 |
L細胞ほか |
骨髄細胞 |
IL-1 |
39000 |
腎臓 |
赤芽系細胞 |
IL-2 |
12000 |
マクロファージ |
T細胞 |
14000 |
T細胞 |
T細胞 |
略号 IGF: insulin-like growth factor, EGF: epidermal growth factor, FGF: fibroblast growth factor, ECGF: endothelial cell growth factor, PDGF: platelet-derived growth factor, TGF: transforming growth factor, CSF: colony stimulating factor, EPO: erythropoietin, IL: interleukin,
個体の成長と成長因子
ヒトをはじめとする哺乳類の成長に成長ホルモン(GH)と甲状腺ホルモンが大きな役割を果たしていることは疑いのない事実であり、その長さ(身長)を規定するのは骨組織の成長です。ところが、GHの骨成長促進作用はGHの直接作用によるものではなく,GHによって二次的に産生されるソマトメジソ(SM)によるものです。SMはプロインスリンと類似した構造を有する分子量7700前後のアミノ酸化合物、すなわちペプチドで、IGF-Ⅰ,IGF-Ⅱの2種類が存在します。このうちIGF-1の血中濃度はGH分泌量に依存しています。GH分泌過剰症である末端肥大症では高値となり、GH分泌を欠く下垂体性小人症では低値となります。GHの治療により増加しそれとともに身長も伸びてきます。
血中IGF-Ⅰ濃度は胎児では低値ですが、子宮内発育にIGF-Ⅰが関与する可能性があることもわかっています。IGF-Ⅰの血中濃度は生後間もなく増加し、思春期に最大となります。これは恐らく性ホルモン分泌増加に伴ってGH分泌が増加するためと考えられています。以後は徐々に低下しますが、70歳を過ぎた頃から急速に低下するまでは、ほぼ一定の値に維持されます。このような加齢に伴う差異は、甲状腺ホルモン,インスリンはIGF-Ⅰ産生に促進的に作用し、エストロゲンは抑制的に作用することが知られているので、これらも関係するかもしれません。同時に、成長ホルモンはどの年齢においても必要だと言うことを物語っていると考えます。
兎にも角にも、これらの成長因子の産生、分泌には栄養状態も関与しています。栄養状態がよければ、IGF-Ⅰも多く作られるのです。食思不振症のように栄養不良状態ではGH分泌はむしろ亢進していながら、血中IGF-Ⅰは著明な低値を示します。そして、栄養状態の改善とともに回復することが知られています。低蛋白食食事療法を継続している方でも同様の傾向、すなわち、GH分泌は亢進していても、血中IGF-Ⅰは低値にあると推察されています。
GHとIGF-Ⅰの働き
IGF-Ⅰが個体の身長に重要な意義を有していることに疑いはありません。しかしながら、それだけではないようです。GHとIGF-Ⅰの成長促進作用を濃度を同じにして比較するとGHの方が遙かに強力です。したがってGHの成長促進作用のすべてがIGF-Ⅰを介するものではないのです。GHにはIGF-Ⅰを介さない直接作用も知られています。実験ですが、下垂体摘出ラットの後肢にGHを潅流すると,潅流側肢の骨成長は対照側肢よりも有意に大きいことが報告されています。この事実よりGHが直接に骨成長に関与することが示唆され、GHが骨組織に作用して局所的にIGFを産生することも明らかになっています。IGF-Ⅰの主要な産生臓器は肝臓ですが、腎においてもIGF-ⅠやIGF-IIが産生されます。骨組織が産生したIGF-Ⅰが直接的、間接的に組織の成長、細胞の自己増殖に必要な因子に関与することも分かっています。
アルブミンなどの蛋白合成促進作用も著明です。
佐中孜,杉野信博;慢性腎不全患者の栄養障害に対する遺伝子組み替え 成長ホルモンの治療効果.日本腎臓学会誌,33(11);1991.
組織の成長と分化
個体の成長(骨成長)とともに個体を形成する各組織も成長します。IGF-Ⅰの受容体はほとんど全身臓器組織に存在し、他の成長因子とともに組織の成長に関与しています。IGF-Ⅰは単に組織の成長のみでなく、細胞の機能分化、障害された組織の修復にも関与することでも知られるようになりました。すなわち、従来から知られている軟骨のプロテオグリカン合成促進作用のほか赤芽球系細胞の分化,神経芽細胞の神経突起の伸長,神経膠細胞のミエリン形成,骨芽細胞のアルカリフォスファターゼ活性の増加,FSHによる卵巣顆粒膜細胞のステロイド産生増強,睾丸ライディヒ細胞のテストステロイド産生増強作用,筋原細胞の筋管形成促進作用など、細胞成長、細胞再生の面で不可欠と思われる働き明らかになっています。身体の様々な場において働いていることが推察されますので、女性の約8割が脚のむくみに悩んでおられると聞きますが、これらの解消にも有用ではないかと期待しています。下記の患者さんはそのことを予感させてくれましたので、紹介させて頂きます。
成長ホルモンは年齢を問わず必要
IGF-Ⅰを用いた腎組織の修復,再生の可能性
IGFはその受容体がインスリン受容体と同様にほとんど全ての組織に証明されています。これらの組織の細胞に対するIGF単独の細胞増殖作用は強くなくても、組織に特異的に作用する他の成長因子を増強することが証明されています。例えば、ラット甲状腺株細胞の増殖に対して,IGF-ⅠとTSHは相乗的に作用するし、動物の一側の腎臓を摘出すると対側の腎臓の代償性肥大が惹起されることは有名ですが、これには腎成長因子が関与しています。肥大腎組織のIGF-Ⅰ含有量は対照に比して有意に増加していることが明らかになっています。IGF-Ⅰは腎尿細管細胞のDNA合成を促進させることも明らかになっています。 この場合のIGF-1は、血中から供給される可能性と腎組織自体で産生される可能性があります。IGFの主要な産生部位は肝臓と考えられていますが,他の組織でも産生されることが判明しているので、腎でも産生され、これがparacrine factorとして直接的に作用する可能性もあります。このようにして、IGF-Ⅰも腎の代償性肥大に対する促進効果を持っている可能性は大きいので、かつて、筆者がヒト遺伝子組み換え成長ホルモンを一部の進行性慢性腎不全の患者さんに適用し、使用可能であった期間は短かったのですが、腎機能が改善したとの印象をもったことを思い出します。
成長因子の臨床的応用
ヒト遺伝子組み換え成長ホルモンは下垂体性小人症の治療に応用されてから久しくなります。筆者の調査が不十分である可能性はあるが、上記のような腫瘍を形成したとの報告はないように思われます。しかしながら、一般論としても身体状況にあった適切な使用が大切です。参考として紹介するアミノ酸系のサプリメントは、医療機関に限定するという販売方針が貫かれています。これは、飲用希望者それぞれの身体状況について、医師によって的確に把握されていることが条件となっているためだろうと思います。私どものところで勤務しているような経験豊富な医師とよく相談してください。
成長因子を用いた細胞や組織の修復,再生
組織が損傷を受けた場合,損傷部位の修復や組織の再生には細胞増殖が主体をなすことはいうまでもありません。このような反応に様々な成長因子が関与します。これからは成長因子をいかに上手にわれわれの日常生活に活かすかを考える必要があると思います。
出血を伴うような組織の損傷を考えた場合、まず損傷部位に血小板が付着,凝集する.血小板にはPDGF,β一TGFなどの成長因子が豊富に含まれており,凝集に際して血小板から放出される.放出されたPDGFは周囲の細胞の遊走や増殖を刺激し,これが組織修復をもたらすものと考えられます。
その他、組織の修復,再生に関与する可能性のある成長因子としては,FGF,EGFなどがあります。FGFは下垂体,視床下部,胎盤などにその存在が同定されています。FGFは血管内皮細胞ほか多数の細胞に対して増殖促進作用を示します。FGFはカエルやイモリの切断肢の再生芽細胞の増殖を促進することでもよく知られています。 他方、EGFはヒトでは尿に大量に排泄されていることで知られており、腎尿細管再生に関与すると考えられています。しかも、EGFは唾液,乳汁,精液などにも存在しており、唾液中のEGFはその胃酸分泌抑制作用とともに腸管上皮の修復に関与しています。
GH分泌とIGF-Ⅰの間のフィードバックメカニズム
IGF-Ⅰは視床下部のソマトスタチン分泌促進を介し,あるいは下垂体細胞に直接作用してGH分泌を抑制する.すなわちGH分泌とIGF-Ⅰの間には負のフィードバック機構が存在すると考えられています。何事も度を過ぎるのはよくないのです。
その他の成長因子
epidermal growth factor (EGF)は多数の細胞に対して強い増殖作用を示しますが、胃酸分泌抑制,プロスタグランディン産生促進,プロラクチン産生刺激,ステロイド産生抑制,骨吸収促進作用などが知られています。
Transforming Growth Factor (TGF)は正常細胞に作用して、細胞がきちんと本来の場所の留まり、かつ生存するように仕向ける働きを持っています。TGF活性の発現にはFGF (Fibroblast Growth Factor), PDGF (Platelet-derived growth factor), IGF-IIなど他の成長因子も関与することが明らかになっています。その他、TGFは用いる細胞の種類や組み合わせる他の成長因子の種類,あるいは培養形態によって細胞増殖を強く抑制したり、各種細胞の機能に影響を与えることが次々に明らかにされつつあるようです。
腫瘍と成長因子の関係も重要です。ヒト肺癌組織中におけるIGF-Ⅰ濃度は正常組織におけるよりも高いこと,胎児組織やWilms腫瘍などでは細胞のIGF-IImRNAの発現が増加していること,一部の腫瘍細胞がIGFを分泌することが知られています。
参考
成長ホルモンではないが、その分泌促進に関与することが知られているアルギニン、リジン、グルタミン、オルニチン、トリプトファンを始めとする厳選されたアミノ酸を含むHGHと呼ばれるサプリメントのパンフレットを紹介致します。ご一読され、是非、当院の健康加齢を目指したエイジングケア外来、生活習慣病外来を受診してください。医療相談もお受け致したいと思います。
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