生活習慣病CKD透析回避プラザ|生活習慣病、慢性腎臓病(CKD)、慢性腎不全、人工透析、血液浄化療法等について情報を発信しています。生活習慣病を改善し、腎臓病を減らし、透析を回避することを目指しています。様々に手を尽くしても透析療法を始めた方には健康で長生き、自立し、自分で歩けるが目標です。

今年は巳年、蛇年。

蛇は多くの人から気味悪く思われています。その記憶は遠い昔の人類に言葉が無かった頃に遡るようです。その頃、人類は爬虫類(とりわけ大蛇)との戦いを何千年もしてきたそうです。この戦いで敗れた戦士は数知れずだったと聞きます。蛇や大蛇をテ-マにした神話が全世界的に多く残されているもそのためだろうとの指摘もあります。そして、その結果かどうかは定かではありませんが、人間のDNAの記憶情報に蛇というものに恐怖を覚えるように刷り込まれてしまったのだろうと想像します。
しかし蛇の好きな人も大勢、おられます。

15年以上も前のことですが、クアラルンプールでのアジア腎臓学会の帰り路でペナン島の蛇寺に立ち寄ったことがあります。そこでは蛇は大小、大変大切に扱われ、お寺の居間にとぐろをまいて寝そべっていました。私の友人はそのうちの1匹を両手で掴み上げ、ニコニコしながら、自分の肩にマフラーのごとく巻きつけていました。

実は、そんな好き嫌いの話よりもっと大切なことがあります。医学・医療の象徴でもあり、畏敬の念の対象でもあるのです。もう30年も前の話ですが、私の留学先の大学(カリフォルニア大学デービス校)の紋章には蛇が巻き付いた杖が真ん中に描かれていておりました。当時、何も 知らない私は同僚の研修医にその意味を尋ねました。その上で、改めて周囲を見回してみると、確かにWHO、 他の医科大学、救急隊など医療関係の紋章には必ずと言っていいほど、杖に巻き付いた蛇が描かれていたのです。ERを行き来する救命救急士は肩から上腕にかけて、杖と蛇の図柄のワッペンをつけており、これが実に頼もしく目に映ったのを覚えています。早速、好奇心に駆り立てられ、調べました。それを今、思い出したので、年頭にあたって、紹介したいと思います。

まず初めに聞いて知ったのはギリシア神話の医神アスクレビオスを意味しているということでした。

そもそもアスクレビオスは何者?ゼウスの息子アポロンと王女コロニスとの間にできた子であるということでした。アポロンは、なんと、音楽の神として知られているあの有名なアポロンです。アポロンは、誤解の挙げ句に、こともあろうに妊娠中の自分の妻を弓矢で射殺してしまったというのです。しかし、この悲劇の陰には医学・医療の勝利が ありました。すんでのところを帝王切開によって小さな男の子の生命が救われたのです。帝王切開という医療技術が紀元前1400年以上前に既に存在したというのでしょうか。いずれにしてもこれが我が敬愛するアスクレビオスのこの世での最初の産声に繋がるのです。

アスクレビオスは、ケンタウロスの賢者・ケイローンに養育されます。その後のアスクレビオスの活躍は目をみはるものがあります。すなわち、医術を修めて古代ギリシア随一の名医となるのです。その腕前は並外れており、遂には死者までも蘇らせたと言うのですから、かの有名なカリスマ医師のブラックジャック先生の比ではありません。ところが、そうそうすんなりとはいかないのが世間というもののようです。彼の業績に異議を唱える者も居たのです。その代表格がなんと、神々の王のゼウスです。ゼウスは、アスクレビオスを生死の秩序を乱す不心得者として、アスクレビオスを捉え、挙げ句の果てには抹殺してしまうのです。このため、残念なことには、この世の動物には不老不死は存在しなくなってしまったのです。ゼウスも結構、先見の明の無い単なる意地悪神なのか、それこそ慧眼の持ち主なのか??兎にも角にも、さすがにその後に、ゼウスは、アスクレビオスを神の一員とし処遇し、天空の「へびつかい座」という星座を与えるのです。しかし、文字通り後の祭りです。何人も平等に死が与えれていまいます。

アスクレビオスの子どもには、医療関係者ばかりです。長男マカオンは軍医であり、長女は衛生の女神ヒュゲイア、次女は薬剤師の元祖パナケイア、さらに、その末裔がかの有名なヒポクラテスであるというからすさまじい限りです。

医学、医療の進歩は、まさしく日進月歩です。これが今日の医療経済を逼迫させるという皮肉な矛盾も生んでいることも事実です。これらを解決する妙案は何か?私はまさしく、予防医学、年は取っても健康に生きる、そして、活動的に生きる。更にこれまで以上に美しく生きることが求められていると言っても過言では無いように考えています。美しく生きるとは顔立ち、スタイルに代表されるような外見的な美しさ、学識、博識、惻隠の情に代表されるような内面の美しさ、更には所作、姿勢に代表されるような身体的な美しさです。CKD診療の目標という視点にたてば、透析療法の開始と言う事態に立ち至らないようするために必要なことは何か、ヘルシーエイジングの追求は透析回避にもつながると考えたのが昨年、一昨年です。今後も、この思いは継続させてゆきたいと考えています。事実、その必然性もありそうだ考えています。

さて、今年も課題は山積しています。

しっかりとした目標を持って、大勢の仲間とともに前に進んでゆきたいと思います。そして、今年の終わりに総括し、反省する。その時に、この年頭所感の何処までが実現できているか・・・・・??心配はあります。しかし、ともかくもやるっきゃ無い。皆様、今年もご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いします。

同時に、ご一統様のご健勝とご多幸をあらためて祈念いたします。